

2011年08月29日 (月) | 編集 |
トレジャーハンティング最終関門にて――。
見えない敵を倒せ。
無理難題とも思えるその試験の攻略方法を、
球磨川はずっと思案していた。
『……よし』
しかし、やがて何かを思いついたように顔を上げると、
『ちょっとこれ、借りるね』
そう言うなり、鰐塚が持っていたマシンガンを手に取った。
そしていきなりその銃を、廻栖野に向けて発砲する。
「きゃあっ!」
轟音と共に弾は廻栖野の足に当たり、彼女はその場に倒れる。
「う、う、い、一体、何を……」
苦痛にうめく廻栖野に、球磨川は笑顔で答える。
『いや、なに、召喚者を倒せば、魔獣も消えるんじゃないかと思ってね』
「ざ、残念ね、そんなことをしても、ケルちゃんは消えないわ」
『いやいや、そんなこと言われても信じられないよ。
敗北を恐れた君が、僕を騙そうとしてるだけかもしれないし』
「そ、そんな、嘘なんてついてない……」
『とにかく、何事もチャレンジで、やってみないと分からないよね。
というわけで、もう一発』
「はうっ! んぐっ! があっ!」
球磨川は一発と言いながら、何発もの銃弾を廻栖野に浴びせる。
いくつもの鉛玉が廻栖野に注がれ、彼女の身体は血まみれになる。
「も、もう、やめて、お、お願い……」
廻栖野はたまらず懇願の声を上げるが、球磨川は聞き入れるつもりがないようだ。
『そういうわけにはいかないよ、こっちだって真剣なんだ。
銃で撃たれるのがそんなに嫌かい?
だったら、ケルちゃんとやらに助けてもらえばいいじゃないか』
「えっ……?」
『ケルちゃんを僕に襲いかからせて、攻撃をやめさせればいい。
もちろん、それくらいは出来るよね?
だってケルちゃんは、とっても強いモンスターなんだから』
「いや、あの、それは……」
『ほら、やってみなよ。さあ、早く!
早くやりなよ! さあ! さあ!』
「んぎゃああああああああっ!」
球磨川は叫びながらマシンガンを乱射する。
しかし彼の呼びかけに、廻栖野は応えられなかった。
なぜなら、球磨川がマシンガンの弾を撃ち尽くしたとき、
彼女はすでに、物言わぬ骸と成り果てていたのだから。
『……』
死体となった廻栖野を見下ろし、球磨川はつぶやく。
『……また、勝てなかった』
その表情は笑っているようで、それでいて、
どこか憂いを帯びているようにも見えた。
球磨川は、ケルベロスを倒すことが出来なかった。
永遠の敗北者である彼の頭上に、勝利の二文字が輝くことはない。
しかし魔獣の存在を肯定する者がいなくなった以上、
幻想は散り、魔法は消え失せる。
最終関門突破である。
メールか何かで上手いこと言って、
ワンダーツギハを呼び寄せた一行は、
その足を先へと進めるのだった。
決着の時は近い――。
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