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「Fate/Zero」二次創作 『Last Order』
2011年12月04日 (日) | 編集 |

アニメ第9話のIFです。
ケイネス視点。



――危険だ。
恍惚とした表情で話す、目の前の女を見ながら、そう思った。
彼女の名前は、ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ。
近い将来、私の妻となる女性である。
いや、『なるはずだった』と言うべきか。

ベッドにくくりつけられた我が身を見下ろし、現状を確認する。
身体は全く動かない。
指先さえ動かせず、そんな状態なのに、痛みもない。
ソラウが言うには、魔術回路すらもはや使い物にならないとのこと。
重体どころではない。
やはり私はあのとき、あの男にやられたのだ。

侮っていた。
銃器に頼る愚鈍な凡人だと見下していた。
その結果が、この有り様だ。
もちろん、もう一度奴と戦えば、おそらく私は勝てるだろう。
奴の戦い方は見切った。同じ手を食らうつもりはない。
……だが、この戦いに『もしも』はない。
これはゲームではなく、戦争なのだ。
負ければそこで終わり。ミスは許されず、油断などもってのほか。
そんな当たり前のことに、今更気付かされるとは。
私は愚かだ。
自らの才に溺れ、何も見えていなかったのだ。
いずれにせよ、認めるしかない。
私の聖杯戦争は、もう終わったのだということを。

敗北を受け入れたからだろうか。
ひどく冷静に自分自身と、そして目の前の女のことを、
きわめて客観的に観察できているように思えた。
さっきからソラウは、私のことを気遣うようなセリフを並べ立てている。
しかし、彼女は私を見ていない。
見ているのは、右手だけだ。
いや、その言い方は正確ではないな。
彼女が見ているのは、令呪だけだ。
ソラウにとって大事なのは、私ではなく、私が持つ、この令呪なのだ。
その証拠に、彼女は私に「令呪を引き渡せ」などと言い出したではないか。

聖杯の力で私の身体を治す?
バカバカしい。そんな言葉など、信じられるものか。
全てを失った今だからこそ、はっきり分かる。
ソラウは決して、聖杯の力を、私のためになど、使ったりはしない。

「……ねえ、ケイネス。何か言ってよ。
 あなたの身体はこんなことになってしまったけど、
 言葉くらいは聞こえてるんでしょう?」

無言を貫く私に、業を煮やしたのだろう。
ソラウは私の小指に、そっと手をかけた。
彼女が何をしようとしているのか、私には分かる。
おそらく、私の指の骨を折り、脅すつもりなのだろう。
何も言われずとも、彼女の顔を見れば分かるのだ。
「令呪を渡さないのなら、右手を切り落とすしかない」
とでも言い出しかねない、その表情を見れば。

「ランサーに命じる」

だから私は、言葉を発する。

「今すぐ、この女を、殺せ!」
「っ!」

私の言葉が予想外だったのだろう。
ソラウの目は、驚きに見開かれる。
そして次の瞬間、彼女の心臓は、長槍によって貫かれた。

「……っ」

悲鳴すら上げず、ソラウは事切れ、その場に崩れ落ちる。

「ケイネス殿! ご無事ですか!?」
「……ああ、大丈夫だ」

ランサーの呼びかけに応える。
さすがはランサー、と言うべきだろうな。
最高の敏捷性を備えたクラスだからこその、この早業なのだ。
他のクラスの英霊であれば、ここへ駆け付ける前に、
ソラウが私の右手を切り落としていたかもしれない。
そして、あの男にしてやられたときも、私はきっと、命を落としていた。
それゆえに、私は伝えるべきことを口にする。

「助かったよ、ランサー。ありがとう」
「……!」

その一言に、ランサーは肩を震わせる。
彼は無言でうつむき、やがて顔を上げ、晴れやかな表情を見せた。

「そのお言葉だけで、私は報われました。
 我が願いは、今まさに、果たされました」

それだけを言うと、ランサーは口元を引き締める。
そこにあるのは従者として、サーヴァントとしての、私情を捨ててた顔だ。

「ランサーよ、現状を把握しているか?」
「はい、マスター。ソラウ様が死亡し、魔力の供給が途絶えたことで、
 私が現界していられる時間は、それほど長くありませぬ」
「この戦いを最後までやり遂げるのは不可能、ということだな」
「まだ策はあります!
 この私が、持てる力を振り絞り、残りのサーヴァントどもを全力で、
 今すぐ葬ってみせます!
 そうすれば、ケイネス殿が聖杯を手にするのも、決して不可能では――!」
「よい。着様も分かっているのだろう。
 我らが倒すべき敵に、そんな強引な手段で勝てる相手などいない、
 ということを」
「……」

私の言葉に、ランサーは再びうつむく。

「よいのだ。
 所詮、私はそこまでの人間だったということなのだから。
 そのことが分かっただけでも、私は満足している」
「マスター……」

沈痛な面持ちのランサーを見て、私は微笑む。
彼にとって、誰が主なのかは関係なかったのかもしれない。
私でなくとも、マスターへの忠義を貫くことさえできれば、
きっとランサーは満足できていたのだと思う。

それでもいい。
望んで呼び寄せた英霊ではなかった。
所詮は代替品だった。
愚直すぎるその性根を、疎ましくも思った。
だけど、それでも彼は、私に尽くしてくれた。
そんなランサーのマスターになれたことが、今は少しだけ、誇らしいのだ。
だからこそ、私は彼に、言わねばならない。

「ランサーよ。令呪を使い、最後の命を下す」
「……そのようなものを使わずとも、マスターのご命令とあらば、
 私はどんなことにでも従います。たとえ、この命に代えても」
「これは私なりの責務なのだ。
 我が誇りと、そなたの誇りを守るための、最初で最後の、な」
「……はい」

ひざまずき、うなずくランサーを見て、私は言葉を続ける。
この世で口にする、最後の言葉を。

「ランサーに、……いや、我が騎士、ディルムッドに命じる。
 私を殺し、残された時間を、己がために費やせ!」
「……御意」

刹那、私の意識は、暗い闇の中に落ちていった――。




――――――――――




冬木市にある小さな山の、誰も足を踏み入れないような場所に、
樫の木の枝が、ひっそりと積み重ねられている。
それは見る者が見れば、墓のように見えたかもしれない。
祈る者も祀る者もいない、小さくみすぼらしい墓。
その側には、長さの違う二本の槍が突き刺さっている。
その二本の槍は、まるで墓の主を守るかのように、
いつまでも強い輝きを放っていた。


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テーマ:Fate/Zero
ジャンル:アニメ・コミック
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