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「咲-Saki-」二次創作 『凡人』
2012年04月07日 (土) | 編集 |

全国編・第二回戦、末原恭子視点。





会場は熱気に包まれていた。

『第二回戦の中でも屈指の好カード、ステージAの第三試合!
 その激闘も、ついにピリオドを迎えました!』

試合が終わったからなのか、実況と、観客席の音声が、
闘牌の場でもオンになり、私の耳に届いてくる。

『1位通過は、清澄高校!』

その声と同時に、歓声が沸き上がる。

『そして2位通過は、姫松高校!
 トップの座は追い落とされたものの、
 どんでん返しの連続で、準決勝進出だ――っ!』

実況者が話す通り、
私たちの戦いはとても厳しく、激しいものとなった。
特に大将戦は、言葉で言い表せないくらいの死闘で、
いくつもの攻防を繰り返した結果、
ラストの二局で、清澄が宮守と永水から高い手を直撃し、
ほんのわずかな差で、姫松が二位に浮上。
結果、私たちは準決勝へと駒を進めることとなったんだ。

『今大会のダークホース・清澄高校の、
 準決勝での活躍にも期待が高まりますね!』

実況者は楽しげに、今後の展開について語っている。
だけどそんな言葉なんて、まるで頭の中に入ってこなかった。

全国に備えて、充分な対策は練ってきたつもりだ。
それなのに、何もできなかった。
清澄、永水、宮守。
その三校の超人的な争いに、私は全く割り込めなかった。
耐えるだけで精一杯だった、というのが、正直なところだ。
けれど、それでも姫松は、私たちは、勝ち上がっている。
なんなんだ、これは。

呆然としていると、清澄の大将、宮永咲は立ち上がり、
私に向かってにっこりと笑った。
そして彼女は、軽やかに口を開く。

「麻雀って、楽しいよね」

――ゾクリとした悪寒が、背中を走り抜けた。
一言で表すなら、戦慄。
あるいは、恐怖か。

その瞬間、私は実感した。
この子と私とでは、格が違う、と。
はるかな高みからこちらを見下ろす、絶対的な強者。
それが、この宮永咲という怪物なんだ。

そんなこちらの心境になんて構わず、
彼女はさっさと会場から去っていく。

「お疲れさん」

と、未だ席から立ち上がれないでいる私の元へ、洋榎が近づいてきた。

「ま、ギリギリ生き残ったって感じやね」

彼女の言葉に、私は首を横に振る。

「――生かされた、と考えるべきやと思う」
「生かされた? 清澄に、か?」

首を傾げる洋榎に、私は頷いた。

「……私たちが残った方が、次の試合も楽になる。
 そういう判断があったと、見るべきや」

「なんやそれ。さすがにそれは、考えすぎちゃうか? 
 余計なことにまで気ィ回すの、あんたの悪い癖やで。
 まあ、あの化けモンやったら、それくらいは出来そうやけど」

ぶつぶつとつぶやく洋榎を余所に、私は唇を噛み締める。
屈辱だった。
姫松の大将という立場に、自惚れていたわけじゃない。
私は私の力量を、自分でもしっかり把握しているつもりだ。
だけど、この結果はあまりにも不本意だった。
姫松は、いや、私は、弱いから勝ち上がることができたんだ。

「まあ、ええやん。勝ちは勝ちや。
 結果が全てやとは言わんけど、結果は大事やで。
 それに、清澄んとこの部長さんとは、
 もう一回くらい戦いたいと思うてたしな。
 うちからしたら、儲けモンっちゅう話やで」

軽快に話す洋榎の言葉にも、私は返事が出来る心境ではない。
そんな私に、彼女はさらに続けた。

「悔しいか?」

その一言に、私は洋榎へと顔を向ける。

「ほんなら、次の試合でリベンジしたったらええやん。
 リベンジする機会があるだけ、
 負けた二校よりマシやと思えばええんちゃうん?」

「……」

「それとも、ギブアップでもするか?
 白旗上げて、清澄には勝てませんて、
 そう宣言した方が、楽かもしれんなあ?」

「――そんなん、するわけないやろ!」

冗談めかした彼女のセリフに、私はつい、大きな声を上げていた。

「痩せても枯れても、私は姫松の大将や!
 大将を任されてる以上、ギブアップなんて絶対にせぇへん!」

「……ほな、次の試合で、めっちゃ頑張らんとあかんな」

興奮する私を、洋榎は柔らかな目で見つめ、微笑んだ。

「期待してるで、大将さん。
 うちも姫松のキャプテンとして、
 やれるだけのことはやってみるつもりや」

不敵に笑い、彼女は立ち去っていく。

「……」

その背中を眺めながら、私もゆっくりと立ち上がった。
――私は凡人だ。
場を支配するような力も、
一発逆転の大技も持っていない、
ごく普通の高校生。
だけど、それがなんだ。
特別な力なんて持ってなくても、
私は、いや、姫松は、勝ってみせる。
事前の対策が通用しないのなら、更なる対策を練ればいいだけだ。

大きな決意を胸に、私は会場を後にした。
清澄高校・大将、宮永咲。
あなたは私が、必ず倒す。


咲-saki-全国編、準決勝へ続く――。


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ジャンル:アニメ・コミック
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