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「咲-Saki-」二次創作 『桃子-Momoko-』前編
2010年09月13日 (月) | 編集 |

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2010年4月2日投稿作品。





私にとって、夏は特別な季節だ。
あの人と共に過ごした、かけがえのない思い出があるから。
夏は必ずやってくる。
たとえどんな日々を過ごそうとも、必ず。


あれから一年が経った。
全国高校生麻雀大会、県大会団体戦。
あの激闘の数々は、今でも心に残っている。
今年もまた、あの熱い夏がやってきたのだ。
インターハイの季節が。

先輩たちが卒業した後、鶴賀には二人の新入部員が入った。
二人ともまだ経験の浅い初心者だったけど、
やる気だけは人一倍ある、元気な子たちだ。
なんでも、去年の県大会決勝のテレビ中継を見て、
鶴賀への進学を決めたのだという。
物好きな子もいるものだと思ったけど、でも、気持ちは分かる気がした。
だって、決勝での先輩の戦いぶりは、私もかっこいいって思ったっすから。
ま、先輩はいつだってかっこいいんすけどね。えへへ。
――正直、先輩が抜けた穴は大きかった。
鶴賀にとって先輩は、チームの中心であり、心の支えだったから。
だけど私は、いや、私たちは、誰もくじけなかった。
津山部長の指導の元、私たちはみんな真剣に麻雀に取り組み、
誰も弱音を吐かずに一年間頑張ってきた。

もう一度、あの決勝の舞台へ上がるんだ。
そして、全国へ。

その夢を抱いて。


大会が始まった。
初戦を危なげなく勝ち上がった鶴賀は、準決勝へとコマを進める。
準決勝の相手は、かなり手ごわかった。
副将戦まで接戦に次ぐ接戦で、ほとんど横並びの点差のまま大将戦を迎える。
緊迫した空気の中、だけど私の心に乱れはなかった。
確かに相手は強い。
でも、私たちだって負けてない。
大将の選手の入場がコールされ、私は立ち上がる。

「頑張って、桃子ちゃん!」

妹尾先輩の声援に笑顔で応え、私は卓に向かった。


大将の選手は皆、上手かった。
誰も打ち筋に隙がなく、判断も的確。
だけど、あのときほどじゃない。
一年前の決勝の、副将戦でのプレッシャーは、こんなものじゃなかった。
あのときに比べたら、決して勝てない相手じゃない!

「ツモ! 2000-3900っす!」

大将戦を終始優勢に進めていた私は、南3局で一気にリードを広げる。
迎えたオーラス、これを乗り切れば決勝進出だ。

「リーチ!」

しかし、ここで対面からリーチがかかる。
対面は現在2着。
私から跳満を直撃すれば、逆転できる圏内にいる。
同巡、私の手にもテンパイが入る。
手の中にあるイーピンを切れば、中ドラ1の両面テンパイだ。
……対面の河を見るかぎり、相手は明らかにピンズの染め手だった。
でも、何も怖くない。
イーピンは危険牌だけど、これは必ず通る。
だって私には、ステルスがあるのだから。
自信を持って、私はイーピンを切る。

――ロン。

「……え?」

一瞬、何が起きたのか分からなかった。
ロン? 誰が?
牌を倒したのは、対面だった。
1-4ピン待ちだ。
あれ、なんだ?
じゃあ、私が、ロンされた……?

リーチ、一発、白、ホンイツ。
跳満、12000点。
逆転。

訳が分からなかった。
どうして私のステルスが効かなかったのだろう?
相手が去年の原村和のような、デジタル打ちだったから?
いや、そこまで徹底した打ち手だとは思えなかった。
じゃあ、どうして?
呆然とする中、私から和了った大将は、喜びを隠さずガッツポーズを取っている。

……そっか、私たち、決勝行けないんだ。

ぼんやりとそんなことを考える。
私が振り込んだから。
私がイーピンを切ったから。
鶴賀はここで、負けなんだ。

真っ白になっていく意識の中で、私の心を、一つの思いが支配していた。
根拠なんて何もない、だけど確信に満ちた、確かな思い。
理屈抜きに、はっきりと感じていた。


私はもう、ステルスを使えない。



「咲-Saki-」二次創作 『桃子-Momoko-』後編


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