

2013年07月15日 (月) | 編集 |
究極vs至高、勝つのはどっちだ。
司会
「では、究極のおもち側から発表していただきます」

山岡
「べこもちです。
北海道や東北地方の一部で、端午の節句に食べられる物です」
審査員
「張りといい、ツヤといい、お見事ですな」
「しかも、この色鮮やかな見栄えときたら」

審査員
「砂糖と白玉粉による白色の生地と、黒砂糖と白玉粉による黒色の生地」
「一粒で二度おいしい、二種類の味を楽しめるというわけですな」
海原
「くだらん」
山岡
「なんだと?」
海原
「べこもちなど、所詮は一過性のブームに過ぎん。
今はミーハーな輩に持てはやされているだろうが、
あと10年もすれば『このプロきつい』などと
言われるに決まっておる。
そんなことも分からんとはな」
山岡
「……」
司会
「それでは、至高のおもち側にも発表していただきましょう」

海原
「岩手の名産、ずんだもちだ」
審査員
「ほほう、これはなかなかの出来栄えですな」
「大きさもバランスが良く、食べごたえがありそうです」

海原
「手作りの臼でついた。
どうぞ、召し上がっていただきたい」
審査員
「ふむ、これはただのずんだもちじゃないね。食感が違う」
「そのようですな。これは、いったい」

審査員
「――そうか、胡桃も混ぜてあるのか!」
「気配を感じさせず、それでいて、小さいながらも確かな存在感」
「しかも、この香りは……」

審査員
「キウイフルーツですな!」
海原
「ジャムにして、隠し味として混ぜてみた」
審査員
「素晴らしい!」
「和と洋の融合、和洋折衷とはこのことですな!」
「いやいや皆さん、それだけじゃなさそうですぞ。
このずんだもち、甘いだけじゃない。
甘さの中にも、ほんのりとしたしょっぱさがある。
これは、もしや」
海原
「ええ、このずんだもちは、
杵ではなく、人の手によってつかれた物だ」

海原
「こちらが、そのつき手だ。岩手でも名手とされている」
審査員
「なるほど! それで合点がいったわ!
真心のこもった汗が、もちの中に染み込み、
絶妙なスパイスとして味に深みを与えているわけだ!」
「これは文句のつけようがないのう!」
会場のムードは至高一色に染まっていく。
そんな中、山岡は目を開き、つぶやく。
山岡
「ふん、その程度か」
海原
「何!?」
山岡
「実は、もう一品用意してあるんです。
おもちの真髄を究めた、究極のおもちを、
どうかご覧になってください」
ゆう子
(山岡さんは自信があるみたいだけど、
いったい何を用意したのかしら?)

山岡
「桜もちです」
審査員
「ほほーう! これは江戸前風ではなく、上方風の桜もちですな」
山岡
「材料は全て、奈良から取り寄せました」
審査員
「ということは、この桜の葉は?」
山岡
「はい。ソメイヨシノです」
審査員
「ソメイヨシノは日本で最も有名な桜だな。
誰もが知る物を用意することで、
より多くの人に楽しんでもらおうという意図が感じ取れるぞ」
「それにしても、この桜もち、どれも大きさが違うね。
これにはどういう意図が?」
山岡
「食べていただければ分かりますよ」
審査員
「ふむ。それでは」
「……! これは!」

審査員
「これは、山梨の山高神代桜!?」
「日本の五大桜の一つですな」
「ふむ。口にした瞬間、神代桜のイメージが頭の中に広がっていきますな」
ゆう子
「外側はモチモチとしているのに、
中のアンコがシャッキリポンとしていて、
絶妙な味わいを生み出しているわ」

審査員
「こちらは静岡県、狩宿の下馬ザクラですかな」
「あっさりとした味付けで、控えめながらも、
それでいて申し分の無い柔らかさ。
これはなかなかのなかなかですなあ」

審査員
「ほう、これは福島の三春滝桜ですか」
「神代桜に負けず劣らずの大きさがあり、
このむっちりとした弾力は、
歯ごたえたっぷりで、なんともたまりませんな」

審査員
「となると、これは岐阜県、根尾谷の淡墨桜ですか」
「ちんまりとした小ささがなんともかわいらしい」
「ちょいとつまみたい時にはピッタリの、
スイーツ感覚で楽しめる一品ですなあ」

審査員
「埼玉の、石戸蒲桜!」
「でかい! それ以上の説明は必要ありませんな!」
「いやはや、なんとまあ。
つまり、日本五大桜をイメージして、
それぞれ大きさや形を変えて作ったということですかな」
審査員たちは満面に笑みを浮かべ、
それぞれの好みに応じた桜もちをおいしそうに頬張る。
山岡
「奈良にうまいものなし、なんて言葉がありますが、
そんなものは昔の話です。
吉野の山は、芳醇なおもちをより大きく育てました」

これが
↓

こうなる
山岡
「また、かの地には、
世界が認めるおもちソムリエだっています」

※プライバシー保護のため一部画像に加工を施しています
山岡
「それもこれも、全ては桜もちのおかげだ。
桜もちがあったからこそ、
彼女たちは成長できたと言っても過言ではないんです」
審査員
「ふむ」
山岡
「日本人は桜が好きだ。
日本の歴史は桜と共にあったと言ってもいい。
我々は皆、心の中に自分だけの桜を持っています。
同じように、おもちだって好みは人それぞれ。
小さなおもちが好きな人もいれば、
大きなおもちが好きな人もいる。
そんな思いが、この桜もちには詰まっているんです」
審査員
「なるほど、分かったような分からんような、
いや正直、さっぱり理解できてないんじゃが、
お前さんの熱い気持ちだけは伝わってきたわい」
「しかし、困りましたな。
究極のおもちも、至高のおもちも、
どちらも甲乙つけがたいですぞ」
「よいではありませんか。
どのおもちにも、それぞれ良さがあるということです」
「うむ。みんなちがって、みんないい」
「まあ ぶっちゃけ、ここで勝敗を決めてしまうと、
色んな人に怒られそうな気がしますからな」
「それもそうですな」
「うむ。みんなちがって、みんないい」
海原
「……」
山岡
「……」
――結果発表を受けて、海原と山岡は同時に席を立つ。
両者はにらみ合うと、背を向けて、会場を後にした。
その表情はどちらも険しいものだ。
しかし、それでいて二人は共に、
お互いの健闘をたたえ合っているみたいだと、
ゆう子は思うのだった。
そんなわけで、
今回の勝負は引き分けという結果に終わった。
だが、これでおもち対決に決着がついたわけではない。
世界には様々なおもちがある。
究極にして至高のおもちを見つけるのは、
もしかしたらあなたの役目なのかもしれない。
OMOCHI is the greatest treasure.
so beautiful, and so wonderful...
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