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咲-Saki-二次創作 『継承』
2013年12月20日 (金) | 編集 |


二条泉視点。
インターハイ終了後のお話。




ある、夏の日のこと。



インターハイが終わり、大阪に帰ってからすぐ、
千里山女子の麻雀部員はみんな、部室へと集められていた。

「……」

清水谷部長は私たちの前に立つと、皆をゆっくりと見回す。
いったい、なんやろう?
確か、部活の再開は明日からやったはず。

「あの、今日はどういった集まりですか?」

恐る恐る尋ねると、部長は私に顔を向けた。
不意に目が合い、胸がちくりと痛む。

(……やっぱり、怒ってるんやろうな)

こちらの思いに構わず、部長は口を開いた。

「今日は部長の引き継ぎの日や。
 みんな、集まってるな?
 欠席してる人には、あとで誰か連絡回しといてな。
 そうそう、怜は病院や。まだ、体調が万全やないからな。
 監督もお見舞いに行ってて、今はおらん。
 代わりに、こっちは任せるって言われたわ」

ほんまはうちもお見舞いに行きたかったんやけどな、と
小さくつぶやくと、清水谷部長は軽く頭を振り、顔を上げた。

「そんなわけで、新しい部長を発表するで。
 名前を呼ばれたもんは、前に出てくるように」

そっか、新部長か。
誰が選ばれるんかは知らんけど、
まあ多分、船久保先輩やろうな。
実績あるし、貫禄もあるし、
誰も文句は言わへんやろ。
ぼんやりとそんなことを考えていると、

「二条泉」

――唐突に、私の名前が呼ばれた。

「あ、はい。なんですか?」

「『なんですか?』やあらへん。話聞いてなかったんか?」

「いや、ですから、何が――」

「あんたが次の部長やって、そう言うたんや」

「…………は?」

私が、部長?
一瞬、何を言われたんか分からんかった。
けど、凍りついた思考が弾けた瞬間、

「え、えええええええええええ!?」

口から大きな叫びが漏れていた。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 意味が分かりません!」

「あんた、日本語通じへんのか? 次の部長は、二条泉。
 ツギノ、ブチョウハ、ニジョウ、イズミ。オッケー?」

「それ全部日本語ですやん! って、そうやなくて!」

「なんや、なんか不満でもあるんか?」

「不満とか、そういう問題やなくてですね!
 私、一年ですよ!?」

「学年は関係あらへん。
 部長に相応しいと思った人を選んだ。それだけや」

「いや、でも……」

なおも言い淀む私に、部長は他のみんなに目を向けてから、
言葉を続ける。

「別にうち一人で決めたわけちゃうで。
 実はな、昨日、あんた以外の部員みんなを集めて、
 聞いてみたんよ。
 次の部長は泉がいいと思ってるんやけど、
 みんなはどう思う?って」

「へ?」

「一人でも渋る人がおったら、やめようと思っててん。
 でもな、そんなん誰もおらんかった。
 満場一致で決まりや!
 監督も怜も、このことは了承済みやで!」

……言葉が出んかった。
まだ、頭の中で、理解が追い付かへん。

「……私はてっきり、船久保先輩が部長になるんかと」

「あぁん?」

思わず漏れた言葉に、反応したのは
船久保先輩本人やった。

「私はな、データ集めて、整理するだけで手いっぱいやねん。
 その上、部長の仕事までやれってか?
 そんなん、忙しすぎて死んでまうわ!
 あんた、私を殺す気か!?」

「いや、いやいやいや、そんなつもりは!
 で、でも、他の先輩方もいますし、
 やっぱり私なんかが部長なんて……」

「泉、やっぱあんた、話聞いてないな。
 清水谷部長は言うたやろ、満場一致やって。
 ここにおるみんなが、
 あんたになら任せていいって思ったってことや。
 分かったら、さっさと前に出てきて、引き継ぎ済ましぃな」

「……分かりません」

船久保先輩に思いっきりガンつけられてびびりつつも、
それでも私は、納得できんかった。

「なんでですか?
 なんで、私が部長なんですか?
 準決勝でも足引っ張ったのに……。
 そのせいで、負けてしもうたのに……」

「それ、結果論やん。
 そんなん言い出したら、私かて一緒やで。
 私がもっと稼げてたら、もっとデータ取れてたら。
 ほんなら決勝にも行けてたし、優勝もできてたわ」

「で、でも――」

「ええ経験になったやろ?」

「ひゃう!」

と、不意に誰かが首に腕を回してきて、
私は思わず変な声を漏らした。
横を向くと、すぐ間近に江口先輩の笑顔があった。

「でっかい舞台で、痛い思いして、悔しかったよな?
 分かるで、その気持ち」

「先輩……」

「あのな、泉、これだけは言うとくわ。
 団体戦の10万点ってな、全員の持ち点やねん」

「え? は、はい、それは、分かってます」

「試合に出た五人だけちゃうで?
 部員全員の、10万点や」

「……あっ」

その言葉を聞いて、ようやく私は、理解できた気がした。
先輩が、何を言おうとしてるんか。

「得点も、失点も、全員で背負ってるんや。
 少なくとも、うちの部員はみんなそのつもりで、
 インターハイに臨んでたはずや。
 せやから、自分一人だけ責任感じることなんてあらへんねん」

頭を軽く叩かれて、不意に目頭が熱くなってくる。

「ま、これは全部、受け売りやけどな。
 俺も去年、おんなじこと言われてん。卒業した先輩に。
 泉が今、どういう気持ちでおるんか、分かってるつもりやで。
 でもな、なんも引け目を感じることなんかない。
 うちの部に、お前のことを悪く思ってる奴なんて、
 一人もおらんのやから」

「そう、なんですか。私は、てっきり」

「――お前、もしかして、他の部員と
 まともにコミュニケーション取ってないんとちゃうか?」

「うぐっ」

「部員同士の交流、大事やで?」

胸に痛みが走る。
心臓をナイフでえぐられたような痛みが。
そ、そういえば私、麻雀部に友達おらんかったわ……。

「後援会のこととか、ライバル意識持ってる相手のこととか、
 そういうの気になるんもしゃーないけどさ、
 もっと自分の周りのことも、よく見てみぃや。
 他の部員は、レギュラーの座を争う競争相手でもあるけど、
 困ったときは助け合える仲間でもあるんや。
 そのことをちゃんと理解しとき。
 自分に部長としての力が足りんと思ってるんやったら、
 他の部員とも話し合って、協力し合って、
 もっともっと、力をつければええやん」

「先輩……」

「まあ、ようするに」

江口先輩は私から離れると、鼻の頭を軽くかいた。

「みんな、泉に期待してるってことや」

……視界がぼやけて、先輩が今、
どんな表情をしているのかは分からへん。
でも、その頬は、ちょっとだけ染まってるように思えた。

「……うちが言わんとあかんこと、全部言われてしもうたな」

清水谷部長は苦笑すると、すぐに表情を引き締める。

「まあ、えっか。ほんじゃ、再開するで。
 名前を呼ばれたもんは、前に出てくるように」

――二条泉。

「はい!」

目元を拭い、今度こそ私は、一歩踏み出す。

「千里山の歴史、受け継いでくれるか?」

「全力でやらせてもらいます!」

「……うん、任せたで」

固い握手を交わし、私はみんなの方へと向き直った。

「まだまだ足りんところも多いですけど、
 皆さん、よろしくお願いします!
 精一杯、がんばりますので!」

部室が拍手の音で満ちていく。
胸の中に、熱い気持ちが広がっていく。
私は一人じゃない。
ここにはみんながおる。
同じ志を持った、心強い仲間たちが。

駆け上がろう、全国へ。
今度こそ、優勝の二文字を手にするために――。




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ジャンル:アニメ・コミック
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